イルミナ 第2号

『イルミナ 創刊号』(2021年11月23日 文学フリマ東京発行)

巻頭特集は号外に続き「広島閉館に寄せて」。2021年5月に閉館した広島第一劇場への思いを、踊り子の牧瀬茜さん、漫画家の小骨トモさんとたなかときみさんの寄稿、広島客のみなさんの座談会で語っていただきました。

そのほか「踊り子へのラブレター」はじめ数々の寄稿に座談会など、創刊号の1.5倍のボリュームで送ります。

目次
まえがき
☆広島閉館に寄せて
 ・勝手に!!! ストリップ新聞 広島第一劇場ラスト!(小骨トモ)
 ・第一劇場への手紙(牧瀬茜)
 広島客同窓会(りんりん、まりも、おやびん、ハレー、ひろし、たなかときみ)
 ・装画解説(小骨トモ)
 ・第一劇場の思い出(ロココ)
 ・キスには女の魂が宿る(たなかときみ)
☆宇佐美なつインタビュー―裸は究極に真っ白なキャンバス
・ス的滅法(貫入)
☆踊り子へのラブレター
 to 美月春(扉絵:ちぇり)
 ・ながれだこ(唐崎昭子/山中千瀬)
 ・月夜に咲いた夢(カオスちゃん)
 to 原美織(扉絵:群青)
 ・原美織さんのお姉ちゃんでいること(めりぴょん)
 to 矢沢ようこ
 ・座談会 ストリップスター・矢沢ようこ(すー、もさっぴー、Sailor、うさぎ、あいだ )
・映画『彼女は夢で踊る』(扉絵:あきら)
 ・座談会 ストリップは止まらない! スト客の話も止まらない!(結城敬介、中本那由子、半田なか子、松本てふこ、うさぎ、あいだ)
・「ちんどん黒井家」に寄せて(夏目ちゃん)
・“坊主ストリッパー”清水くるみは二度脱ぐ(きのコ)
・裸体とダンスと涙―ストリップ舞踊論(武藤大祐) 
・エスエマー達の青春(月乃悠)
・自粛スト客の感情(山中千瀬)
・消えた劇場 ③福山第一劇場(福山)(とあるロック客)
・法律Q‌&‌A(あいだ/監修:花月)
・ストリップ劇場をめぐる法規制の現状と未来(花月)
・シアター上野摘発から考えるストリップの未来(あいだ)
『イルミナ』バックナンバー
あとがき

まえがき

 二〇二一年五月一四日の金曜日。『イルミナ』号外になる予定の紙の束をキャリーケースに詰め、新幹線に乗りました。広島第一劇場の最終週に行くためです。広島駅からは路面電車に乗って、忘れてきた頭痛薬を買うために立ち寄った流川の小さな薬局で、カウンターの女性が「それ、いいわねえ」とキャリーを褒めてくれました。
 近くのホテルに荷物を預けて劇場に向かうと場内はすでにものすごい熱気でした。この木製の舞台も照明も、「エレガントでエキセントリックなファッションステージを」というアナウンスもミラーボールも今回が最後。すべてが愛おしく見えました。演者が盆に出てくると、本舞台の照明が落とされ、身体が浮かび上がって見える。何度も観ているはずの踊り子さんのステージが高みのような域に至っていることに気づく。明るく楽しいチームショーでたくさんのお客さんが号泣している。この週のために作ったという演目で、踊り子さんが涙を流している……と思ったら同じ人が次の回には馬に乗って駆け回る! ストリップ、最高!
 劇場を抜けて大急ぎでお好み焼きを食べたり、S‌N‌Sでやりとりしていた広島のお客さんと初めて会ったり、関東で顔なじみのお客さんの「始発の新幹線で来た」という言葉に驚いたりもしました。かくいう私も土曜の終演まで観てから翌朝ほとんど始発の新幹線に乗り、仮眠を取りつつ号外のホチキス止めをして、東京で開催される文学フリマに直行したのでした。
 そこから半年が経ちました。そのあいだ、シアター上野には営業停止の処分が下り、新型コロナウイルスの、現時点では最大の感染拡大の波もありました。行きたかった香盤をたくさん見送り、踊り子さんの引退や休業のお知らせを見るたび、なかには喜ばしい報告もありましたが、見逃してしまったものがあまりに多いことに歯がゆさを感じました。また、この状況下で生命や生活を脅かされている人、不安に苛まれている人、思い通りの選択ができない人が多くいることも日々頭に浮かびます。踊り子さんが舞台に立っているときも、そうでないときも、そして踊り子でなくなってからも、何者にも脅かされることなく自分の心に沿った選択ができるようにと願っています。もちろんどんな職業の人も、職業のない人も。
 「ストリップの楽しいのは、劇場後に居酒屋で先輩スト客の昔話を聞くことだよねえ」と、今号で話を聞かせてくれたあるお客さんが言っていました。二〇二〇年から現在、人が集まることも飲食しながら語り合うことも急激に難易度が上がり、もはやそれらができないことのほうがスタンダードになりつつあります。創刊号の一・五倍のボリュームとなった今号をつくる過程は、ページからこぼれ落ちてしまったお話も含め、以前なら幕間や居酒屋で行われていたようなお喋りを、ほんの一部であれ改めて体験することでもありました。とりとめのないお喋りの楽しさと、参加者のみなさんが文章や絵に込めた力強さ、両方を感じられる本になっていたらいいと欲深く思っています。そしてまた、どこかの劇場で会いましょう。

(うさぎ)

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