司法は差別の連鎖を止めて セックスワーク給付金訴訟の第3回口頭弁論が終了

 性風俗事業者に持続化給付金・家賃支援給付金支給を行わないという国の決定に対し、デリヘルの経営者が国を訴えた裁判「セックスワークにも給付金を」訴訟。同訴訟の第3回口頭弁論が3月3日、東京地裁で行われた。

 「この事件は自分のせいで起きたと思ったのです」。今回の口頭弁論でもっとも印象的だったのは、意見陳述での原告のこんな言葉だった。

 「この事件」というのは、2021年6月に立川で起こった殺傷事件のことだ。デリヘル勤務の女性が、当時19歳の男性にホテルで殺害され、助けに向かった男性も重傷を負った。

 容疑者は「風俗業をやっている人間はいなくていい。風俗の人はどうでもいい」と供述したという。

 同訴訟の第一回期日はこの事件に先立つ2021年4月。この時、被告である国側は「性風俗は本質的に不健全」という言葉を答弁書に残し、不支給の根拠とした。

 この答弁は「国が堂々と差別を行った」として大々的に報道され、多くの市民の注目を集めた。

 原告は「この答弁が結果的に容疑者の差別感情を肯定し、殺人に向かわせる要因になったのではないか」と主張。自身の後悔と悲しみ、そして国に対する怒りを押し殺した声で語った。

 また、今回の口頭弁論では、2022年1月から開始された事業復活支援金についても性風俗事業者は支給対象外であることが指摘された。

 終了後の期日報告会で、亀石倫子弁護士は「風営法の根本的見直しが必要。性風俗業は許可制ではなく届出制(※1)。許可制と違い『国が認める業種ではない』という発想に基づいており、今回の国の主張の根拠となっている。届出制という枠の中に入れられたために、性風俗事業者は法の保護の外に追いやられている」と話した。

 また、弁護団長の平裕介弁護士は「司法の役目は少数者の側に立ち、正当な判断を示すこと。しかし、最近は裁判所が『社会通念』や『国民の理解』という言葉を使いたがる。立法は多数派の代表者として法律を作成し、行政はそれを実行する。ここで司法が少数者の側に立たず、『多数派がこう主張しているのだから適法である』と言ってしまうのでは、三権分立が成立せず、近代国家たりえない」と強く語った。

 性風俗業者に対する国の職業差別を問う同訴訟の次回期日は6月30日。第一審判決となる。

(あいだ)


専門家による意見書や、原告の意見陳述などは以下のホームページで確認できる。

https://www.call4.jp/info.php?type=items&id=I0000064#case_tab

※1
・許可制:申請者(経営者)は警察署に申請書を提出。審査を受けた上で許可証を取得する。風俗浄化協会の検査官による実査確認も行われる。
・届出制:申請者(経営者)が警察署に届出書を提出し、届出書が受理されると、受理された日から10日後に営業を開始することができる。許可証は発行されない。「国は性風俗を公に認可しているわけではなく、あくまで営業届出を受理し、その存在を把握しているにすぎない」というロジックで運用されている。

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